銀行資本増強 欧州に両刃の剣

【ロンドン会川晴之、ワシントン平地修】ギリシャを発端とした欧州債務危機は、仏ベルギー系大手銀行デクシアの経営危機に波及するなど一段と深刻化している。危機の連鎖を食い止めるため、欧州中央銀行(ECB)は6日、金融機関の資金繰り支援策の導入を決めた。さらに、欧州の首脳からは銀行の資本増強に前向きな発言が相次ぎ、欧州連合(EU)は銀行の資産査定に乗り出した。だが、資本増強のための公的資金投入は各国の財政をさらに悪化させる恐れがある。

 「金融機関の資本増強で協調すべきだ」。EUのバローゾ欧州委員長は6日、加盟国に迅速な行動を促す声明を発表。少なくとも25の銀行の資本増強が必要になる可能性を示唆した。メルケル独首相も5日の会見で「必要なら資本増強の用意がある」と表明。メルケル首相は6日、欧州金融機関の資本増強を求めてきた国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事と会談し、早期の取り組みの必要性で一致した。ECBのトリシェ総裁も6日の会見で金融機関の資本増強を強く促した。

 欧州では、ギリシャなどに続き、巨額財政赤字を抱えるイタリアの国債も格下げされ、国債価格が下落。こうした国債を保有する欧州金融機関が損失を抱え、資本不足の懸念が強まっている。デクシアはギリシャ国債を大量に保有し、危機に陥ったが、イタリアの国債発行規模はギリシャよりはるかに大きい。仏大手銀BNPパリバはイタリア国債の保有残高が241億ユーロ(約2・4兆円)とギリシャ国債の保有残高(50億ユーロ)を大きく上回る(SMBC日興証券調べ)。イタリアの信用不安が深まれば、欧州金融機関は危機の連鎖に見舞われかねない。

 欧州金融機関は手元資金を確保するため投融資の縮小に動いており、BNPパリバは700億ユーロの資産売却を決めた。

 欧州金融機関は、高収益が見込める新興国に資金をつぎ込んできたが、新興国からも資金を引き揚げつつあり、ブラジルやインドなどの通貨が急落した。世界経済を支えてきた新興国の景気悪化は欧州危機をさらに深刻にしかねない。

 この悪循環を断つには金融機関の資本増強が必要で、EU各国の銀行監督当局を統括する欧州銀行監督機構は資本不足かどうかを判定する資産査定に乗り出した。機構は7月、91金融機関の資産査定結果を公表したが、「合格」したデクシアの危機が表面化し、再査定が必要と判断した。

 しかし、経営難の金融機関が自力で資本増強できなければ、各国が独自に公的資金を投入するか、欧州金融安定化基金(EFSF)を活用するしかない。EFSFも各国が資金を拠出しており、EFSFを活用した資本増強も最終的には各国の財政負担に跳ね返る。

 資本増強を促しているIMFも一枚岩ではない。米紙によると、欧州危機拡大に備え、IMFは融資枠を1・3兆ドル(約100兆円)以上に増やす方向で検討(現時点では7500億ドルへの拡充が決定)している。これについては、「IMFの役割を強めるべきだ」(ブラジルのマンテガ財務相)と前向きな意見がある一方、一定の拠出を求められるとみられる中国には慎重論もくすぶる。

  

欧州基金拡充策 一転承認へ

[ブラチスラバ 12日 ロイター] スロバキア野党スメル党のフィツォ党首は12日、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)拡充案を14日までに承認することで連立与党と合意したことを明らかにした。

 来年3月に総選挙を実施することでも一致した。